「王子だからか?」
「違う。私は別に興味ない。勝手に決めつけないで」
「ふーん?」
「だからと言ってあなたの彼女になる気もない」
「言ってくれるねぇ」
立ち上がって私の方へ近付いてくる。
その目は獲物を捉えた動物のように鋭くて、品定めをするようにじっくり見つめていた。
恥ずかしいよりも気持ち悪いの方が正しい。
背中にゾクッとした感覚が走ったのが自分でも分かった。
「羽音に手ぇ出さんとってや」
私を庇うように海音が私の前に立つ。
「今日は大人しく帰る」
その不良たちは屋上から去っていった。
去り際に言われた言葉に私は耳を傾けた。
―「明日からが楽しみだねぇ?羽音ちゃん」―
私の耳元で小さく呟くその言葉を私はあまり気に留めなかった。