「もうすぐ花火上がるってー」
そんな他人の声を聞き、現実に戻された。
…もう、そんな時間なんだ。
話しすぎちゃった。
主に蒼空と綾芽と。
海音は芽生ちゃんと話してるし、私が話しかけても多分…ううん、絶対に無視される。
「そろそろ上がるみたいやな」
――バァァンッ!!
――ババァン!!
海音がそう呟いて上を向いた瞬間に、色とりどりの花火が上がった。
どれも綺麗で、すごかった。
UFOやスマイル、ハートなど、色んな形の花火が上がり、近くの人たちの歓声も同じように上がった。
「海くん!!好きだよ!!」
花火が上がる間に聞こえた単語。
そのせいで、私は何も考えれなくなった。
花火の音も
周りの声も
屋台から漂う美味しそうな匂いも
夏の蒸し暑さも
何もかも、私には感じなかったし聞こえなかった。
最悪な、花火大会だったことだけは覚えている。
そのあと、どうやって帰ったかも分からない。
気がつけば家に居て、気がつけば眠っていた。