「うわーっ!!どうしよう、ヒナ!!もう昼休みになっちゃったよ!?」
今は昼休み。
私の唯一の憩いの時・・・のはずだったのだが・・。

私はとりあえず、昨日斗哉に言われた通り彼の名前を聞くことにした。
朝までは「まぁ、なんとかなるだろ・・・。」と思っていたのだが、その時が刻一刻と迫る度に、私の心臓がドキドキしていた。

そしてとうとう、(運命の)昼休みが訪れたのであった。
「大丈夫だよ!勇気出して」
「でっ、でも・・・」
だって・・・、もしも、冷たい態度とられたら・・・・って思うと・・・・・。
「っ!・・・や、やっぱり無理!無理だよ!!」
「え、ちょっ、るか!?」
私は、教室を飛び出した。
否、自分でもよく分からなかった。
多分、体が勝手に動いたのだろう。

宛もなく、ただただ走る。走る。
気がつくと、辿り着いた場所は『屋上』だった。
「はぁ・・・はぁっ、・・・」
息を整えるため、軽く深呼吸をする。
何故か深呼吸をしてもまだ心臓がドキドキしている。

「まぁ、いいや・・・。外の空気吸いたかったし」
私は気分を紛らわせようと、屋上の固くて冷たい、鉄のドアを開ける。
開けた途端、春を感じさせる心地よい風が吹いてきた。
何故かそこは、昼休みのわりには人気が全く無く、がらーんとしていた。
私的には、好都合だったのだが。

「はぁ・・・・やっぱり、無理だよ。名前を聞くなんて」
私は屋上のど真ん中に寝転がる。
空は、今日も綺麗だった。

まだ私には後ろめたい気持ちが沢山ある。
朝までの気合いとやる気は、とうに消え去っていた。
「・・どうしよ・・・・。でも、このまま、っていうのも嫌なんだよな」
はぁ、と今日何度目かのため息を吐く。
・・・でも、斗哉とヒナが応援してくれているんだ。
私だって、二人の期待には応えたい。

どうしたら、いいのかな・・・・?

その時、キィッ、と鉄のドアを開ける音が聞こえた。
誰かが来たのだろう。
当たり前だ。昼休みなのだから。

私は起き上がり、その開かれたドアの方向へと視線を向ける。

「ー・・・っ!?」

そのドアを開けたのは、『彼』だった。