「あ~らぁ、それは運悪かったわねぇ~、灯夜ちゃん。」

「あぁ。あとママ、その呼び方やめてくれ。」

「あらい~じゃなぁ~いっ!灯夜ちゃん、可愛いんだし♪」

「....」


俺は、仕事が終えてからBarに向かった。

その店は、俺が会社を継ぐ前から通っている、行きつけの店だった。ここのカクテルは、格別美味いのだ。


「だけど、その女テレビで"彼とは、数年前から距離があると感じていた。彼と話し合いをして、同意のうえで別れた。"とか、言ってたわよ?そうじゃないの?」


それを聞いた瞬間、俺はグラスを持つ手に力を込めた。

数年前から距離があった?
彼と話し合いをして、同意のうえで別れた?

あれほど高級な服や靴、バック、さらには家などを買わせといて?
あれほど海外旅行一緒に行って?
あれほど贅沢させておいて?


あれほど"愛してる"と言っておいて?


距 離 が あ っ た だ と ?

自分から俺を捨てたんだろ!!


俺は、小さく鼻で笑った。

そして、燃え盛るこの気持ちをどうすればいいのか分からず、ただ両手を握りしめ、肩を震わせた。


その様子を見たママは、"まぁまぁ灯夜ちゃん!"と言い、俺の肩を叩いた。

「今から、とっておきのショーが始まるから、それを見て元気を出しなさいよ!」

俺は、ショーとはなんだ?と、口を開こうとした瞬間、突然辺りが真っ暗になった。