「...長、桐島社長!」



俺は我に返った。
俺の目の前には、心配そうな目で俺を見つめる部下の矢野隼人が立っていた。


「どうかされましたか?どこか具合でも悪いのですか?」

「大丈夫だ、すまない。」

「...もしかして、例の彼女のことですか?」


俺は両肩をびくりと動かすと、やっぱりかというように、矢野はため息をおとした。


俺と矢野は小学校からの親友で、まるで兄弟のようにいつも一緒だった。
だから矢野は、俺の考えていることを全て言い当ててくる。
時々、心を読まれているような気がして恐ろしく思うほどだ。


「何故、俺があいつと別れたことを知っている?」

「今朝、ニュースになってましたよ。"超売れっ子モデル藤咲麗香、某有名会社の社長と破局か"ってね」

「....」

いくらなんでも、情報早すぎるだろ。
マスコミ、恐るべし。

「心中お察ししますが、仕事は別です。割りきってお仕事しましょう。」

「あぁ、すまない。」


俺は、苛立つ気持ちを抑え、矢野から貰った書類に目を通した。