「だから、」
「……?なん―――ん!?」



ふと視界が翳り、唇には柔らかい感触。

かと思いきや、それはすぐに離れ、パシャっと言う機械音が耳に響いた。



「ごちそーさま。ほら、キスされて顔真っ赤な奈美ちゃんだよ。」



目の前をちらつく携帯の画面には確かに私の顔。



「なっ……お前、消せよ!」
「えー?無理。」


白石はニヤリと笑う。



「ふざけんな!消せ、この変態!!」
「絶対消さない。これ学校のみんなに見せたらどんな反応するだろ?もう委員長として威張れないかもな?」
「ばっ……そんな恥ずかしいもん見せんな!!絶対ダメだ!!」



どうしようかなー?と白石は楽しげに笑う。


コイツ私で遊んでるな……。



「じゃあ俺のことも言わないって約束してくれるなら見せない。」
「約束する。大体私が誰に言うと?」
「それもそうか。じゃあ交渉成立ってことで。」



白石はそのまま携帯を懐にしまう。



「おい、ちょっと待て。しまう前にデータを消せ。」
「見せないとは言ったけど、消すとは言ってない。」
「さっき納得してたろ?」
「でも何があるか分からないから。俺、心配性なんだ。」