その男に私は見覚えがあった。
さっき逃げ去った二人とは違い、男は私服。
制服姿しか見たことがなかった上、髪型もいつもと違うために、すぐには気づかなかったが……
「…白、石?」
その顔は間違いなく白石 稔のものだった。
「お前……白石だよな?」
「…………白石ナンテ知リマセーン。」
間違いなく白石であるソイツは、下手な片言を言いながら肩を竦めた。
「………馬鹿にしてるのか?」
私は詰め寄り、胸倉を掴み上げる。
「あははは、ごめん。」
全く反省していない謝罪。
私は盛大にため息。
手を離し、改めて白石を睨む。
「で?」
「え?」
「お前は一体何していたんだ?そんな格好をして。」
白石は私の言葉に自らを一瞥して、首を傾げた。