「あんまり集中してくれなくて困ってんだよ。神田はそんな事なかったけどな」
「……半分脅しが入ってたじゃないですか…」



その時の事を思い出したのか、神田は目を潤ませて俺を睨む。

可愛いなぁ。神田は可愛いの部類に入るけど、俺から言わせれば妹を見る可愛いだ。



「そうだっけ?」



「そうですよ!! 嫌がってる私をクラブに引きずり込んだじゃないですかぁ!!」


…確か、大音量が苦手だって言う神田を無理やり…面白半分、クラブに入れた事があったな…。


けど、すぐにへたりこんだ神田にやり過ぎたって反省して、外に出たのにどうもそこだけが印象に残っているらしい。



「分かった。悪かった。俺が、悪かった。何かおごってやる!! 何がいい?」

「もぅ! そう言う問題じゃないんですってば!」



ぶぅッて、頬を膨らませていた。


「…そんな、怒んなよ…」




「結~花~?」



神田の友達らしき子が棚の向こう側から声が聞こえた。その声は、神田にも聞こえたのか、俺に頭を下げて「じゃ、お先です」と、言って友達の方へ駆け寄って行った。



その後ろ姿を見送った俺は、新しい科学の参考書を手に取ってレジに歩き出した。






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