「――三枝、それ保健室行かなくていいのか?」


「あ……土居くん。平気だよ、ただのすり傷……」



言いながら改めてひざの傷を見た私は、ごくりと唾を飲んだ。

なにこれ……

血が……すっごい出てる。

それだけじゃない、なんだか火傷をしたみたいにヒリヒリする……



「うちの学校の陸上競技場、本格的なタータンだから転んだらただのすり傷じゃ済まないんだ。つーか見てるだけで痛そうだから強制連行する」


「わ、いいよ、自分で歩く!」



土居くんが私の肩を担いで勝手に歩こうとするので、私は慌ててじたばたする。



「暴れんな、胸が当たる」


「なっ……!?」


「……冗談だよ。ほら、さっさと歩け」



土居くんって、こうしてちゃんと言葉を交わすのは初めてだけど……こんなに強引な人だったんだ。

陸上部で高跳びをやってる爽やかな印象しかなかったから、ちょっと意外だ。


先生だったらこんな時、もっと優しく抱き抱えてくれるのかな……

無意識にそんなことを考えてしまった私は激しく首を横に振り、妄想から逃れる。

すると土居くんが不思議そうな顔をしたので、私は何でもない、と言ってつくり笑いをした。