各競技の決勝戦とリレーを午後に残してみんな休憩に入っているはずなのに、体育館からはボールの弾む音がした。
「やばい、もう始まっちゃったかなぁ……!」
「有紗、説明してってば。何が始まってるの?」
空腹でちょっと機嫌の悪い私。
体育館の入り口に着くとようやく、有紗が口を開いた。
「やっぱり始まってる――――恩ちゃんと曽川先輩の、1ON1」
「わんおん……わん?」
間抜けな声を出しながら、有紗の視線の先を見ると、そこには……
「――もう諦めたら?恩ちゃんバスケ未経験なんでしょ?」
人差し指の上でボールをくるくると回す、曽川先輩と。
「まだ……あと三本あります。諦めませんよ、僕は」
ひざに手をついて呼吸を整える、恩田先生の姿があった。