「母さん」


「なに?」


お姉ちゃんのところに行くと、羚弥君と話していた。


「俺……思い出すのが少し怖くなったよ」


聞くつもりはなかったけど、今の羚弥君の発言が少し気になって立ち止まってしまった。


「え、何で?」


「もしかしたら、思い出したら俺が俺じゃなくなる気がするんだ」


「羚弥が悪い人なわけないじゃーん。心配しなくても大丈夫だってー」


「違うんだよ!」


突然羚弥君が大声を出して、私はビクッとなった。お姉ちゃんも驚いた様子だった。


「誰かを異常なまでに恨んでるかもしれないんだ……ごめん、ちょっと風に当たってくる」


「き、気をつけて……」


私は思わず立ちすくんでしまった。