「お母さん、もう一つだけお願いがあるんだけど、いい?」


「なに?」


「私、この人と同じ高校に行きたい!」


羚弥君は驚いていた。


「……分かった。多分、転入に必要なテストとかは優奈なら余裕だと思うし、行っていいけど、家売っちゃうし、ここを会社にしたいと思うから、ちょっと遠いかな……」


「家ならあるよ。今までこの人と同居してたから、続けていけばいいから」


「え、それは申し訳ないことを……」


「家なら任せてください」


お母さんは少し迷ったような素振りを見せた。


「……分かりました。優奈、ちょっと耳貸して?」


「え? うん」


お母さんに近づくと、耳元で「好きなの?」と訊かれた。


「そ、そんなんじゃないよ!」


「ふふ、頑張ってね。では、優奈のことよろしくお願いします」


「任せてください」


でも、どうなんだろう。こんな気持ち初めてだから、もしかしたら……


「じゃあ、送り戻します。車の手配よろしくね」


「はい、任せてください!」


「優奈、行ってらっしゃい」


「うん! 行ってきます!」


それから間も無く、私たちはお姉ちゃんの家へ送り届けられた。


心の中は晴れやかだった。