距離は一年逃げてきただけあって、相当あった。車で夜通し運転し、昼間に到着するのだから、相当なものだろう。


私は緊張で眠れなかったけど、羚弥君は疲れてたせいか、ぐっすり眠っていた。


「お疲れ様」


ボディガードにそう言って、羚弥君を起こして車を降りる。


目の前に広がった光景は、今までに見たことがないものだった。


以前より家が大きくなっていて、私は思わず呆れてしまった。


「でっけえー」


羚弥君が周りを見回して驚きの声を上げる。


「これが……嫌なんだ」


ボディガードに聞こえない程度の声で、そっと囁くと、羚弥君も同じくらいの声量で「分かってる」と笑って言った。


「お母様のところへ連れてってください」


「かしこまりました」


門と呼べるくらい大きな扉を開け、敷地内に侵入する。本当の家までは少し距離があった。


こんなに広くて何の意味があるのだろうか。便利とかそういう問題じゃなくて、周りへの見せつけにしか見えない。


家に入ると、私は更に呆れた。相変わらずのセンサー内蔵の電気がついて、広すぎる玄関と廊下があらわになる。


「お母様の部屋はどこらへんにあるの?」


「五階でございます」


「五階……」


羚弥君も凄いを通り越して呆れているようだ。


設計上、すぐに上の階に行けるよう、エレベーターは近かったけど、お母さんの部屋に行くまでには長すぎる廊下をひたすら歩かなければいけなかった。


床が動くようになっているけど、着くまでに三分もかかった。