「ふっ、顔赤くなってる(笑)」


とハルが下を向いて笑った。


「今日から雨音は俺のもの!」

といきなり抱きついてきた。

人通りの多い道だっていうのに。

周りの人たちにそんな姿を見られるのが恥ずかしい。



「ちょっとやめて。離れてよ-、、」

と腕をほどいた。

「すぐ照れる。」

と私の手を掴んだ。

「手ぐらい、繋いでてもいいだろ?」



私は呆気にとられて


首を縦にふるしかなかった。



やっと、、学校についた…


ここまで来るのに
みんなの視線が刺さるように
感じた。




そりゃ、そうだよね、、


普段、誰とも関わらない私が

男子と歩いてるんだから。



ハルはそんなこと、お構いなしにズカズカと廊下を歩いている。





すると前から高見沢君がやって来た。

「おうっ。はよっ。」

ハルも

「はよっ」と仲良く答える。

「ハル、山口さんと付き合ってんの?」

高見沢君が興味深そうに聞いた。


「おうっ。付き合ってる。なっ?雨音?」


「へっ?!や、その付き合ってるとかじゃ」


そんなんじゃないんだけどな、、と思いながら戸惑っていたら

「へーそうなんだ?いがい(笑)」

と高見沢くんに誤解されてしまったようだ。

ちがうんだけどな-(汗)


ハルが教室のドアを開け、

教室に入った。

ハルに続いて私も教室に入る。



これまでお喋りをしていた女子たちが話を止め、


私に視線を向けた。


『ちょっと、何あいつ。ハル君と登校してきたの?』


『え、マジで?ちょ-、ウケるんだけどっ。なんでなんで?!ホントに付き合ってるのかな』


『えーないよ。ハル君、かわいそう。しょうがないから付き合ってあげてる、だけでしょ。』


と私にも充分聞こえるほどの
声のボリュームで言っているのは。


クラスで一番の権限を持つ


峰岸桜のグループだ。

桜ちゃんは背が高くフランス人形のような、綺麗な顔立ちで

その上、自分の思ったことをズバズバ言う。


だけど男子の前では急に性格が変わるのだ。

だから男子からはすごくモテる。
私が一番苦手な人物である。




知ってる。最初からこうなることは分かっていた。


別にあんなの、気にしなければいいんだよ。


するとハルが

「あいつ、名前何て言うの?」

と尋ねてきた。


「え、峰岸桜ちゃんだよ。」


「あ-。ありがと。」


とハルは席を離れた。



そして峰岸桜の所へ近づいていくではないか。


ハルは堂々と峰岸桜の前まで行くと


「あのさ。さっきから、コソコソうっせーんだけど。ちょっと黙っててくんね?」


と上から峰岸を見下ろして言った。


峰岸はハルが本気で怒ってることを悟ったらしい。


「ご、ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ?ハル君、ごめんね」


と涙目で誰でも分かるような、くさい演技で言った。






「は?なんで俺に謝ってんの。
雨音に謝るべきだろ。俺の大事な雨音をお前は傷つけたんだぞ。」




「は?」


峰岸はキレたように言った。
そして私の所へしぶしぶ

歩いてきた。


「なんか-。傷つけちゃったみたいで、ごめんね。」

と明らかに反省はしてないが言った。


そして私に聞こえるか聞こえないぐらいの小さな声で。





「うざっ」

と峰岸が呟いた。