理科室の窓からベランダに出ると
わずかに段差はあるものの、
頑張ってよじ登ることができる。
そこを登ると屋上に行くことができた。
ここは私だけが知っている
秘密の場所。
誰も知らない。
独りになれる場所。
のはずだった。
だけどなんで、栗原君が屋上への行き方を知ってるんだろう??
そんな疑問が浮かんできた。
外を見ながら、ぼーっとしていると栗原君が
「不思議に思ってるでしょ?」
と顔を覗き込みながら言ってきた。
「ん、まあ。そりゃあ不思議だよ。」
「まあ、山口さんには分からないよね〜。」
「どういうこと?」
「俺、ずっと見てたんだよ?」
「ん?」
分からなくて、首をかしげると
「俺、西高に通ってたじゃん。その時、いつも窓から君を見てたんだ。ぱって見ると、いつも君がいた。」
ああ、確かに西高って隣にあるから見えるのかも。。
「え、でもなんで私の名前知ってるの?!」
と聞いてみた。
「え?分かんないの?」
「うん。。」
「俺、山口さんと同じマンションに住んでんだよ。(笑)」
と栗原君は笑っている。
「えっ」
「いやいや、絶対嘘だぁ。うんうん。絶対嘘。」
そう言い聞かせた。
「嘘じゃないから(笑)」
と栗原君は言うのである。
「じゃあ、今日俺と一緒に帰るか!」
と栗原君はニコッとしながら言った。
「…はぁ-??」
その日から私と栗原君の奇妙な関係が始まったのである。
「あまね〜、早く、帰っぞ!」
鞄をぶんぶん振り回し
私の前に立っている。
そう、こいつは私の前に、今日とつじょ現れた栗原晴。
「だいたい、いきなり呼び捨てしないでよね。」
とふてくされたように私が言うと
栗原君が
「早く行こーぜ!」
と私の手を引っ張った。
「ちょっ。」
なんなの。こいつ。。
「俺のことは、ハルでいいからな。これから、お前のことは、あまねって呼ぶな。」
学校での帰り道、並木通りを歩きながら
ハルはそう言った。
なんでこんなに、ハルは笑顔なんだろう…