彼女は最初から、嘘の態度をとっていた。


ニコニコ笑っている様で、心の底からは笑っていない。


まるで悠樹の様だった。

だから、わかったのかもしれない。


悠樹とおなじだったから。


あぁ、彼女も、知ってしまったつもりになってしまっているのかって。



本当の、世界を。



私は知らない。今の世界が幻なのかもわからない。


悠樹だって、知っている様で、知らない。


いや、知らない事に最近、本人が気付いた。



「愛さんは、いいですね。」


「そうね。恵まれてるわ。」


「それもありますけど。」



他に、何があるの?


彼女の思考はふわふわしていてつかめない。


つかんだと思ったら、かわされてしまう。



「私は、人を不幸にする。」


「え…?」


「両親が死んで、始めに家をとられました。


次に、お金。


次に、思い出。


次に、友達。


そして言われたんです。

―お前は人を不幸にする。―


だから、近づくなって。」



知っている。


きっと彼女は本当の事を知っている。


私の知らない、世界を。

だから、あきらめている。


幸せから逃げている。


また堕ちてしまうのが、こわくて。



「あなたは人を幸せにできる。」



そう。彼女だからこそ。


「できるよ。きっと。あなたなら。悠樹を幸せにできる。」



あなたは、自覚はないけど、あの子が好きなんでしょう?


あの子だって、あなたが好きだわ。


今まで、女の子に対して、あんなに真っ赤になることなかったもの。




だから、逃げないで。



どうか。そんな顔しないで、生きていて欲しいの。