「“狂い金”は請け負った仕事は絶対失敗しない事で有名。今も次の手を考えているんでしょうね。」
前田の肩からは出血が止まらない。
私はガーゼを大量に押し付けて圧迫止血をしようとしたが、ガーゼは血に汚れていくだけ。
今し方の神楽の告白も、私はあまり聞けなかった。
ただ、私達がここから出る事ができない事だけを漠然と理解していた。
「うっ…はぁ、はぁ…」
「血がとまんねえ。このままじゃ…」
前田が、死んでしまう。
紅とかいう探偵は、悔しそうに顔をゆがめた。
打つ手はなしって事か。
ここは売り出し前のマンションで、隣近所もへったくれもない。
おまけにここから出られず、救急車も呼べない。
「くそ…!」
「針と糸、ある?」
「花音!?」
「傷をふさぐにはただ縫い付ければいいってもんじゃない。君は医者じゃないんだ。」