「れ〜君、ストップ!」

その声に振り返ると、千草によく似た背格好の女の子の姿が。

「あぁ、千尋ちゃん。おかえり」

学校帰りらしく制服姿で、玄関前にいる俺のすぐ真後ろに立つ。その顔は、ニッコリと言うよりは、ニヤニヤという表現が当てはまる、そんな顔で俺を見つめる。

「ま〜た、お姉ちゃんに会いに来たの?いい加減付き合っちゃいなよ〜」

そう言い眉を歪ませ、顔を少し傾けながら、冷やかしにも似た発言をするのは、千草と一つ違いの妹、千尋。

「余計なお世話。人の事より、自分の心配してなよ」

一つしか歳の差はないとは言っても、ここは年上として、寛容な心で応対。

「私はいいの!それよりお姉ちゃんを見てらんないよ。もしかしたら夜な夜な『蓮〜蓮〜』て嘆いてるかもよ?」

千草とよく似た声で変な事言うなよ…、千尋のヤツ…
はっきり言って俺のペースが乱される唯一の相手で、昔から正直苦手…

「千草とは只の幼なじみなんだから、そんな事はない!」

幼なじみだから…
こんな言い訳にもならない発言を何度繰り返した事か…。それでも毎度毎度キッパリと断言する。

「ふ〜ん、でもある日突然フォーリンラブなんて…あったりして」

ニコリと白い歯を見せ、まじまじと俺の反応を楽しむかのように顔を覗き込む。

…ノリは千草に似てるけど千尋は悪ノリが過ぎる…

こういう手合いは、さらりと受け流すに限る。