考えがぐるぐると回っているうちに、駅に着いた。


とりあえず倉持くんにお礼を言って、傘を出る。


倉持くんが傘を閉じている間、ふと目線を上げた先で視界に飛び込んできた人に、私は思わず目を見開いた。



「じゃあ行くか……、宮本?」



どうした?と私の視線の先を追った倉持くんは、一瞬驚いたような顔をしたけれど、すぐにひとつため息をついた。




「……だから、言っただろ」


「湊くんの彼女、って」


「碓井だよ」



私の視線を掴んで離さない、駅の近くのファーストフード店の窓際の席に座る、ひと組のカップル。


向かい合わせじゃなく、隣り合って座ってて。


幸せそうに、笑いあってる。



大好きな。


大好き、だった、湊くんと。




────静香。