「え?いや、でも、悪いし……」


「俺も駅一緒だから。……気付いてなかったか?たまに同じ電車になるの」


「え……」



全然、気付いてなかったです……。


私だけ気付いてなかったことが、なんだか申し訳なかった。


どうしてそう感じるのかは、分からないけど。



「……別に、いい。とにかく入ってけ」



苦笑交じりにそう言う。



「……でも」


「いいから」


なかなか一歩を踏み出さない私にしびれを切らしたのか、倉持くんは唐突に私の腕を掴んで、引っ張った。



「きゃ」


「行くぞ」



有無を言わせないような口調で言って、倉持くんは歩き出した。


やっぱりいいです、なんて言えるはずもなく、私は彼の隣を歩く。