「今日の昼に話してんの聞こえたんだけどさ。……今日、傘、持ってきてないんだろ?」
まっすぐに私を見ることはせずに少しだけ目線を下げて、倉持君はそう言った。
……私?
傘?
「……そうだけど……」
そう。
雨が降って嫌な気持ちになっていたのは、告白できないから、だけではない。
朝、あまりにも晴天だったから折り畳み傘を鞄から抜いてきてしまったのだ。
だから、最寄りの駅まで走るつもりでいた。
「……宮本のこと、待ってた。駅まで、傘入ってけよ」
倉持くんは外に出て、ばさ、と黒い傘を広げる。
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