大輔は名残惜しそうに私にちゅーをして部屋を出て行った。
大輔が出て行った瞬間私の目からは涙が流れた。
泣き疲れて、私はそのまま寝てしまった。
『空…咲空!』
誰かが私を呼んでいる声で目覚めた。
『んー?』
『咲空、夕飯だよ?』
声の主は大輔だった。
『大輔ー!』
私は大輔にぎゅっと抱きついた。
『咲空、どうした?』
『会いたかったよー』
『俺だって会いたかったよ?それより、夕飯一緒に食べよ?俺、一緒に食べたくて持って来ちゃった。』
『うん!いただきまーす!』
2人でたわいもない話をしながらご飯を食べた。
『ごちそうさま。』
『ごちそうさま。これ片付けて来るから。今日は、一緒に寝よう?』
『あ、それで簡易ベッドがあるんだ。』
昼間、みさねぇーが
『先生に咲空ちゃんの部屋に運んどいてって頼まれてさ。』
と言いながら持ってきた。
『今度から夜勤がない日と休みの日は、ここに泊まるから。咲空の親御さんには許可はもらってる。』
『嬉しいけど、体壊したら大変だよ?』
『無理はしない。約束する。だから、良いだろ?』
『わかった。ありがとう。』
『あぁ。じゃ、これ片付けてくるから。』
『ありがとう。』
大輔は私の返事を聞くと、食器を持って部屋を出て行った。
しばらくして大輔が戻ってきた。
しかし、白衣は脱いでスエットだった。
『夜勤ないから着替えちゃった。どう?』
『何か新鮮。かっこいいよ。凄く似合ってる。』
『本当か?良かったー』
大輔はそう言うと寝る準備を始めた。
簡易ベッドは、以外にも狭く、寝返りが打てる状況では無かった。
けど、大輔は
『咲空と寝れるなら狭くても我慢できるよ。』
と言ってくれた。
『大輔…明日は?』
『明日は、休みだから。』
『わかった。』
『咲空はさ、将来の夢とかあるの?』
『ずっと歯科衛生士さんになりたいんだ。けどね、大輔とあって看護師になりたいって思ってるよ?』
『そか。』
『大輔はどうしてお医者さんになったの?』
私がこう聞いたら大輔は胡座をかいて、その上に私を座らせた。
そして、後ろから抱き締めてきた。
『小学校のときに、親友が病気になったんだ。小児癌。治る見込みは無いって言われたらしい。けど、その親友は大学5年まで生きた。中学校の時に一度は完治した物の、大学の時に肺癌となって再発したんだ。結局その親友は、医者になれなかった。だから、俺は決めたんだ。そいつのためにも俺が医者になるんだ。って。』
『そうだったんだ。』
『俺が医者になるきっかけをくれた親友に俺は感謝してる。』
『いい話だね。』
大輔は私の手を静かに握ってきた。