「お父様には言わないから!そのままでは駄目!!」
虎助はそのまま片足を引き摺るように数歩歩いて、その場に倒れ込んでしまった。
「とら…っ、」
私は名前を叫ぼうとして、口をつぐんだ。
ここに虎助がいることが知られてはいけない。
私は寝間着の裾を握ると、意を決して庭の草を踏み締めた。
静かに、虎助に近付く。
息は浅いが、眉を寄せて意識はない。
息を飲み込み、私は虎助を抱き上げた。
小さな身体。
女の私でもなんとか持ち上げられる。
部屋まで遠くはない。
静かに、こっそりと、ゆっくりと、私は虎助を部屋へ担ぎ入れた。
先程まで自分が寝ていた布団に横たえる。
灯りは点けられない。
暗がりの中で、私は虎助の頭巾を外してあげた。
汗をかいている。
熱もあるようだ。
どうしよう。
誰か呼ばなければ。
いや、駄目だ。
私が、なんとかしなければ。