虎助を見なくなって更に一年経ったある夜のこと。

 いつものように月に語りかけていたときだった。

 不意に、月が欠けた。

 私は眉を寄せた。

 雲ではない何かが月の中に影を作り出して、それがユラリと揺れた。


そのとき、叫ぶべきだったのかもしれない。

 曲者だったかもしれないのに、私は何故かそれを見守った。

 影はまたユラリと揺れ、そのまま庭に落ちてきた。

 私は急いでそれに駆け寄る。


 確信があった。


「虎助……!」


 小さな声でその名を呼ぶ。


「虎助!!」


 小さな身体が、そこに横たわっていた。