「……、」


 優しく、手のひらで包み込む。


「誰かしら」


 女中は微笑ましそうに笑った。


「とってもお綺麗ですね、椿様」


 夢じゃない。


 ああ。

 きっと、虎助はもうこの屋敷には居ない。



 ねぇ、虎助。

 それでも私は月に語りかけても良いですか?

 闇に紛れて、どこかで聞いてくれますか?

 憎いというなら憎んで下さい。

 虎助。

 私は貴方を――、




「ええ、とても」




201302