虎助は、とても身体が小さい。
まだ子供かもしれない。
年齢すらわからない。
長めの髪を後ろで一本に結んでいる。
目は切れ長で、口元はいつも引き締まっていて、唇を動かさずに「御意」としか喋らない。
武士ではない。
武士とは、何か違う生き物のようだ。
羽織がいつも黒いせいか、夜がとても似合うように思う。
たまに動きやすそうな装束を着て、頭巾で顔を覆っているときもあった。
顔は見えないが、その異色さからすぐに虎助だとわかった。
私が14歳の時、お父様に「虎助と話がしてみたい」と頼んだことがあったが、お父様は私の頭を撫でて眉を下げると、「あいつは駄目だ」と言われた。
それから、お父様は私の前で虎助を呼ばなくなってしまい、私は虎助に会うことができなくなってしまった。