今は虎助の顔が見える。

 高潔で、凛とした瞳。

 具合が良くなるまで引き留めたいが、そうもいかない。


「世話になった」


 そう言い残すと、虎助は音もなく去っていった。









 その後の虎助の様子は誰にも聞きようがなく、心配で何も手につかなかったが、3日目の朝、部屋の入り口に、椿の花が置いてあった。


「綺麗……」


 虎助だ。

 大丈夫だと教えてくれたのだ。

 椿の花を私は大事に抱き締めた。





 虎助。

 私はもう貴方のことばかりを想ってしまいます。