あたしが生まれた世界。あたしが旅した世界。

 それはまったく別世界だった。

 そんな世界にジンは来るという。あたしと共に生きる為に、未知の世界に飛び込んでくるという。

 はちきれるほどの大きな喜びの傍らに、ふと不安が胸をよぎる。

 大丈夫だろうか。彼はこちらの世界で生きていけるのだろうか。

 純粋な自然界の結晶のような存在である精霊のジン。

 神の存在する世界で、その眷属として生まれてきた彼は、果たしてこちらの世界に順応できるんだろうか。

 あたし達には、これからどんな道が待ち受けているんだろうか。

 ……。

 大丈夫だ。きっと大丈夫。だって……


 この世界にも、威風堂々と火は灯り

 大地は優しく足元を支え

 黄金の砂漠は果てなく続き

 美しい水は命の器を守り湛える

 それら全てを包み込み、風が世界を駆け抜ける。

 人の心は時に弱く、時に強く、そして誇り高く有り続けようとする。

 どこまでもどこまでも。


 全て、有る。だから大丈夫。

 そしてあたしがここに居る。

 何があってもあたしがジンを守ってみせる。

 水の力は無くなったけど、あたしにはそれに勝る物がある。

 彼を愛している心。それさえあれば何も怖く無い。

 ……愛が世界を救ったんだもの! 男ひとりぐらい、なんぼのもんよ!

 どんな試練が襲い掛かろうと、あたしの敵じゃないわ!

 いざとなったらこの腕一本で、彼を守ってやろうじゃないの!

 愛に勝てるものなんてこの世に存在しないんだから!