「うっ……。うっ、うぅぅーー……」

 あたしの唇から、耐えきれない嗚咽が漏れる。

 どんなに歯を食いしばっても、とてもとても押さえきれない。

 この思いを抑える事など、とてもできない。

 嵐のようなこの喜びを……

 爆発するようなこの幸せを……

 押さえるなんて、とてもできないわ!

『おい、お前なに泣いてるんだよ!? ひょっとして嫌がってんのか!?』

「なにバカなこと言ってんの! 思いっきり盛大に喜んでるんだってば!」

 泣くほど嬉しいって感覚、あんたには無いわけ!?

 まったく、どこまでもどこまでもあんたって男はほんとに!

 喜んでるわよ! 喜んでるの!

 喜んで……うっ、うぅ……

「うっ、よろ、よろこ、よろごんぶ……」

『……舌噛むぞ? ま、いつになるかまでは約束できないけどな。相当待たせる事になりそうだ』

「うぅ……うっ……待っ待っ……」

『あぁ、待ってろ』

「うん」

 うん。うん。うん。

 あたしは首を思い切り縦に振って、何度も何度も頷く。

 待ってる。待っているわジン。

 どんなに時間がかかろうと構わない。いつまでもいつまでも待っているわ!

『もうそろそろ時間切れだ。次は声だけじゃない。本当に会いに行くから』

「えぇ。待ってる」

『信じろ。必ず行く。必ず。オレは必ず行く』

「えぇ。ねぇジン、あたし……」

『なんだ?』

 あたしは大きく息を吸い、はっきり明瞭にジンに伝えた。


「あたし、あなたを愛してる」

『……オレもお前を愛してる。雫……』


 その言葉を最後に、ジンの声は聞こえなくなった。時間切れだ。

 あたしの周りには、ジンでは無い風が吹いている。

 それでもあたしは幸せだった。幸せの涙を流し続けた。