苛烈なスパルタ教育に音をあげて、マティルダちゃんはしょっちゅうジンに庇護を求めて泣きついてくるらしい。

 しかし、なにせ相手はロッテンマイヤー。

 精霊だろうが王だろうが、神でさえも彼女に太刀打ちはできない。

 天下無敵の彼女は、これからもビシバシとマティルダちゃんを鍛え続けるだろう。

 お陰でマティルダちゃんは最近、めっきりとしっかりしてきたらしいから、このまま持ちこたえてくれるんじゃないかしら。

 おまけに、なぜか『ロッテンマイヤー』が侍女長の正式な役職名になったらしくて、あたしは大笑いしてしまった。

 そうか、みんな元気にやってるんだ。

 良かった。本当に良かった。安心したわ。

 ……。

「ねぇ、ジン」

『なんだ?』

「あたし、もう一度そっちの世界に行けないかしら?」

『……』

「もう一度、会いたい。みんなに」

 会いたいの。会いたい。みんなに。

 そして……ジン、あなたに会いたい。会いたくて堪らない。

 声だけじゃ嫌。姿が見たい。会って話したい。あなたに触れたい。

 この気持ちが抑えられないの。

 だってあたし、今でも、あなたの事をずっと……。

『無理だ』

「……」

『世界間の移動なんて大事は、神々の力を持ってしても、たった一度しか出来ない。お前がそっちへ帰れたのは奇蹟なんだ』

「……そう……」