「千歳ー、飲まない?」

数十分後…

戻って来た鳴海の手には、ナゼかワインのボトルが握られていた。

「はい?…どっから出たの、それ?」

「家に寄って来た…前祝いしない?」

「…本人達のいない所で?」

「その方が、楽しそうでしょ?」

「まーねー…」

外したエプロンをまたかけると、千歳はカウンターの中に入った。

「つまみを作ろう…夕飯をかねて…」

「それは助かるね…」

ささやかな宴会が始まった…



「だいたいさ〜かわいくないよね〜」

客用のテーブルに、パスタやチーズの盛り合わせとサラダが並ぶ…

極上のワインが空けられた何本目かに、鳴海が呟いた。

「…誰が?」

先程から主語の抜けた会話に、千歳が辛抱強く質問する…

「兄さん達さぁ〜…ふつ〜式の前日まで黙ってる〜?」

「あぁ…なるほど…」

まぁ…芸能人の結婚式だし…いろいろあるんじゃないかなぁ…と思ったが口にはせず、代わりに言った。

「…仕事、休んで良いよー?行って来れば?」

「え?」

「さっきおじさん達に話したら、仕事代わってくれるって…遠慮しないで行っといで、だってさー」

千歳はそう言うと、ワインを飲み干した。