「ああ…!その声はカイサルですね、久しぶりです。また訪ねて来てくれたんですね、ああ…でも姿が見えません、どうしてですか?」

相変わらずスポットライトは、ベッドの上の天使だけを照らしている…

「…お前は知らないだろうけど…堕天使になると、天使の時の記憶を忘れてしまうんだ…だからお前には、もう俺の姿は見えないし、そのうち声も聞こえなくなる…」

「ええ?!そうなんですか?ああそう言えば最近、元天使だった事を忘れていました」

「ああ…だから、もうここには来ないよ…それを言いに来た」

「…そうですか…天使だった時の記憶を忘れてしまう事に、未練はありません…だって私の心は、こんなに醜くなってしまって…もう、天使に戻る事は不可能ですから…」

「…」

「ああ、でも一つ心残りが…カイサル、あなたの事を忘れてしまうのは、少しさびしいですね…」

暗闇の中から、悲しげなラサエルの声だけが聞こえてきた…