「…それは…彼女と言う名のかしら?」

「いいえ違いますよ…古い…旧友なんです…」

その言葉に、ウソは感じられなかった…

「そう…これで私も、あなたも自由の身ね…」

「ええ…本当に綾子さんには、感謝しています…」

「…お礼なんていらないわ…あなたのために、協力した訳じゃないもの…」

「では…何か記念に贈らせて下さい…何がいいですか?」

「…そうね…じゃあ…」



「綾子、鳴海君のせがれから、ファックスで婚約破棄の書状まで来たぞ!お前何も聞いてなかったのか?!これでいいのか?お前は…」

「…私は…お父様の言う通り、結婚するつもりでした…ただ…それが取り消しになっただけですから…」

私はふり返って、父の顔を見た。

部屋中に大輪のユリの香りがして…むせる感じがして、気分が悪かった…

「…でも綾子…静時君の話をする時、楽しそうだったから…私はてっきり、お前が静時君を気に入ったのかと安心していたんだぞ?」

「え…?そうでしたか?…良く分かりません、ただ私は…」

ただ…命令に従っただけ…

「…ならお前は…どうして泣いているんだ…?」

「は?」