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「綾子、綾子!大変だ!!新聞を見たか?!」

土曜日の昼間に、大慌てした父が私の部屋に飛び込んで来た。

私はユリの花束を花瓶に活けながら、ふり向かずに答えた。

「…どうかしましたか?お父様…」

「『鳴海』が!鳴海グループが解散したぞ!!何落ち着いてるんだ、お前?!ああ、一体どうゆう事なんだ?!うちの会社は鳴海の株を大量に持っているんだぞ!大打撃だ…こうしちゃおれん!!綾子、電話を借りるぞ!」

そう言って父は、電話のボタンを激しく打ち始めた。

私はその音を聞きながら、昨夜かかって来た電話の事を思い出していた…



「…明日メディアに載せます…あなたの父上の会社に、迷惑をかけるような事はありませんから…そう、お伝え下さいね…」

「…そう、おめでとう…思ったより早かったわね…」

「ありがとうございます…綾子さんに恨まれるのが怖いので、頑張ばりました…」

「…相変わらず、失礼な男ね…」

「性分なんですよ…」

電話の向こうで、笑っているのが分かった…

「…ところであなた…これから、どうするつもり?」

「…今のところ何も考えていません…ああ、ただ…友人に会いに行こうかと思っています…」