…電車の走る音以外は、誰の声も聞こえてこなかった…

里美さんを送るため、電車に乗り込んだのはいいけど…さっきから一言も口を聞いてくれないのだ…

座席は、いっぱい空いていたけど、僕達はなんとなく扉の前に立って、外の景色を眺めていた…


「…鳴海君…ごめんね…」

「え?…どうして…?」

突然、口を聞いてくれたと思ったら…里美さんが、自分に謝ってきた。

「…ともかく謝りたいの…深く聞かないで…」

「う…ん…分かった…」

相変わらずうつむいたままの里美さんが、今度は顔を上げたかと思うと、睨まれてしまった…

「それから…あーゆー事は、もうやめてね…」

「?…あーゆー事?」

「…私の身代わりになったでしょ?鳴海君…」

「え?だって、あれは自分が…」

「それでも!…今度やったら許さないわ」

「え…えっと…分かりました。すみません…」

…どうやら里美さんが怒っていたのは、その事だったようだ…

でも、いまいち分からない…