「あ?」

「判押しとか…」

「…他には?」

「行事の挨拶とか…」

「…って訳だ、天皇みてーだろ?」

二人に向き直ると、八崎は長沢の言葉をさえぎった。

「どうして、そうなっちゃったのかな…」

鳴海が呟く…

「ああ…場所だろ」

三人は八崎の方を、いっせいに見た。

「見てみろよ…周りを田んぼに囲まれたこんな立地で、権力ふりかざして何が楽しい?…うちの生徒は、中ぐらいの成績ばかりが集まって来ている。自分で何かしようと思うなど、面倒の極み…土地柄も合わさって、うちの生徒は事なかれ主義よ」

「…そんな訳でね、生徒会に立候補する人っていないんだよね…」

長沢が補足した。

「執行部は委員会制だから、ま、確実に集まるだろ。そこで書記と会計はジャンケンでもして決めりゃあいい。が!会長をジャンケンで決める訳には、いかんわな」

皮肉気味に八崎が笑った。

コクコクと、鳴海と里美はうなずくしかない…

誰が考えたのやら、この仕組み…土地柄もふまえて良く出来たものだと、二人は感心してしまった。