「麻奈美、今なんて言った?」

「だから、遊んでるのは私じゃなくて副社長って言ってるの。副社長って従業員のことを何よりも大切にしてくれるのに、何故か椛にだけは当たりがキツいと言うか傲慢なんだよねぇ」

今の言葉、聞き捨てならない。

「何が言いたいの?」

「ん? 何が言いたいんだっけ? ははっ、忘れちゃった」

「何よ、それ……」

麻奈美はいつもこうだ。言いたいことだけ言って、最後までちゃんと完結してくれない。まあそれも、最近はもう慣れたけど。

「思い出したら話してよ。ということで、今日は麻奈美の奢りで飲みに行くぞ!」

麻奈美の肩にトンッと手を乗せると、諦めたように彼女が笑う。

「いいよ、奢る。いつもの居酒屋でいい?」

「やった! 麻奈美、あんたはホントにいい女だね。私が男だったら、とっくに抱いてる」

有無を言わさず麻奈美の細い体を、ギュッと抱きしめる。

「椛が男じゃなくて良かったわ。マジ勘弁」

「だよねぇ~」

ふたりで顔を見合わせて大笑いすると、一気に疲れも吹っ飛んだ。