「私のせいとおっしゃいますけど、あれは……」

「新郎の友人たちが悪いとでも言いたいのか?」

「そ、それは……」

副社長の気迫に押され、言葉に詰まる。

永遠の愛を誓い合うおふたりのため、そんなおふたりを祝うゲストのため。どんなことがあっても、お客様を第一に考え行動する。決して、他の誰かのせいにはしない。

そう会長に教えられてここまでやってきたのに、私としたら……。

「キャプテンやサービススタッフもいるんだ。急なことだったとは言え、お前ならなんとかなったんじゃないのか?」

悔しいけれど、副社長の言う通りだ。

「はい、おっしゃる通りです。ご迷惑をおかけしました」

「まあ別に、謝ってほしくて言ったんじゃないけどな。椛がなにか失敗すると、教育係だった俺の面目丸つぶれってこと」

そう偉そうにのたまう彼。

総合結婚式場『雅苑』副社長、矢嶌蒼甫(やじまそうすけ)三十歳。端整な顔立ちに柔らかそうな茶色の髪、身長も高くスラッとした立ち姿はどこから見ても完璧でデキる男そのもの。

「容姿端麗という言葉は副社長のためにある」と事務の女の子が言っているのを聞いたことがあるが、本性を知らなかったら私もそう口にしたかもしれないくらいのイイ男……なんだろうけれど。