「昨晩のことが引き金? おばさん、かなり怒ってたからね」

「そうなんだ」

リフォーム自体は昨日今日決まったわけではないだろうが、そのことを私に伝えるキッカケは昨日のことが引き金になったのかもしれない。

「で、どうすんの。アパートでも探す?」

「うん。でも決まるまでは叔父のウィークリーマンションで暮らす。そこなら家電もある程度の家具も揃ってるし、なんとかなるよね?」

「なるよね?って、椛は何の心配してるの?」

「そ、それは……」

掃除、洗濯、炊事。何にもできません。

なんて。ひとり暮らし歴十年の麻奈美に、どうやって伝えればいいの?

『いつも勝ち気で負けん気の強い椛が、何クヨクヨしてんのよ!』と笑い飛ばされるに決まってる。

でもこのままグズグズしていても埒があかない。恥を忍んで麻奈美の正面に立つと、ガバッと頭を下げた。

「麻奈美、一生のお願い。ひとり暮らし仕方、一から教えて下さい」

笑われるのを覚悟して頭を下げたというのに、麻奈美からは何の反応もない。その代り、私の頭上に落ちてきた声は……。