「柊ちゃん、どうしたの??」

仕方なくドアまで赴きながらも、表の顔は絶やさない。


「お前絶対気付いてたよな?
俺何回も呼んでたんだけど!」

「…へ?何が??」


少しイラついた様子の柊介に小首を傾げて惚ければ、途端にげんなりした表情へと変わる。



「…いや、もういいわ。

つーか古典の教科書と古語辞典貸してくれねぇ??
今日川口の授業あるんだよ〜」


川口ってのは確か柊介のクラスの教科担当で、すごく厳しいと評判だ。




そういえばこの前、柊介廊下に立たされてたっけ。


「いいよ、ちょっと待ってて」


そう言って自分の席から取ってきたのは古典の教科書と…英和辞典。


「はいどうぞ。
返すのはいつでもいいからね!」


「おぉ、梓マジ神!

…後で何か文句つけたりしねぇよな??」

「え〜!そんなことしないって!」


「何か梓が優しいんですけど!

まぁとにかく助かったわ、サンキュ!」



何も気づかずにそれを受け取ると柊介は颯爽と走って行った。