今思えば幼少期のあたしは暴君そのものだったような気がする。


おもちゃは全て独り占めにした。

遊具には並んだことがなかった。

給食のデザートの余り物は毎日食べ、

宿題を自分でやった記憶なんて皆無だ。



わがままで傲慢、世界は自分を中心に回っていると疑わない性格はその頃から健在で、子ども特有の素直で純真な心は母のお腹の中に忘れてきたらしい。





そんなあたしも成長するにつれて自分の性格によるトラブルが絶えなくなり、今の性格へとシフトチェンジしていったのだ。



天然な女ほど女の敵となるものはないが、自分の立場ならばこれほど都合のいい性格はない。

ただへらへら笑ってたまにドジって的外れな発言をするだけで可愛がってくれるし、都合の悪いことは天然スルースキルでのらりくらりとかわせばいい。




さっきの告白だって、あんな馬鹿げた発想常人がするわけない。


あれは天然な女を演じるあたしの上等な断り文句だ。




もちろん、この高校であたしの本当の性格を知っている人は誰もいない。




「おい梓ー!」


この男1人を除いては。