「……………」
梓の口からためらいもなく発せられた一言に、身体は前進しつつも固まってしまった。
今の俺の状態を表すなら絶句の二文字に尽きるだろう。
「てか、お腹空いたし。
コンビニ寄ってよ」
続けて悪びれもなくそう言う梓に少し頭
が痛くなったような気がする。
「…お、お前さぁ、寝起き初めにそれ言うか!
もっと俺に言うことあるだろ!」
「は?何が?」
「は?じゃねぇよ!
つーか、お前今すぐ降り…」
「それより早くコンビニ。
あたし今激辛チキンが食べたい」
なんという…なんという自己中精神。
コイツはコンビニに行くには来た道を10分かけて戻らないといけないことを把握していないのだろうか。
長年の付き合いでそのワガママっぷりは嫌という程思い知っているのに、未だに神経を疑ってしまう。
「ワガママにも程があるんだよ!
今日は帰るからな」
「………」
若干苛ついた声で言い放つ。
すると後ろからは何も反応が見られなくなった。
あれ、少し言いすぎたか?
なんて梓にミジンコ並にでも情けをかけた俺はとことん学習能力がないんだと思う。
グイッ
「…ぐぉっ!!」
次の瞬間には物凄い力で俺の首に梓の腕が巻きついていた。