「別に大したこととかじゃないんだけどね。
少しお話ししたいなーって!」
「えっ!?
わ、私とですか?」
「うん!…嫌かな??」
いつもの調子で人懐こい笑みを浮かべると、地味女は首をブンブン振って否定した。
「いや、私友達とか少ない方なんでびっくりしまして。
…えっと、お名前伺ってもよろしいですか?」
……はっ?
あたしはその一言に思わず固まる。
「…?
はっ!
すみません、自分から名乗るのが普通ですよね?
私、木下詩織っていいます」
「あ…あたしは朝比奈梓」
「わぁ〜なんか華やかな名前ですね!」
ありがとう、と笑顔で取り繕うもののいろいろと驚くことがあって表情を普段通りに作れているとは思えない。
端的になぜあたしが驚いたかというと、こいつがあたしのことを知らなかったからだ。