「それ…は、重症だな」

「ピエール、俺……このまま、ルイに何もしないでいられるだろうか?」


 朔也は途方に暮れたようにピエールを見上げる。


 ピエールは強張った笑みを浮かべ、朔也の元に歩み寄り、その肩をポンポンと叩いてやった。


「……まあ、今のは、ちょっと不意打ちだったよね。僕も予期してなかった」

「…信じられない。

たった十五・六才の女の子の微笑みに、一喜一憂してる。

この俺が、自分を忘れて、茫然と見惚れてたなんて………!」


 朔也は、ほぅ、とせつなげに長い吐息をはいた。


 ピエールはなんとも言えないと言った苦笑いを見せて、もう一度、朔也の肩を叩いた。



 そこに、コンコンとドアがノックされ、セシルが顔を出した。

 何か困ったような顔をして、二人を見ている。



 朔也とピエールは軽く首をかしげた。


「あの………」

「どうしたんだい?なにか、あったのか?」

「あの―――、ルイが、ケーキを持ってきてくれたんですが………」

「ああ、あれね」