「これ、彼らのところに届けてくるわ。

おやつの時間にぴったりだと思うから―――」



 そこで、瑠哀は何かを思い出したようにハタと止まり、皿をテーブルにもう一度置き直した。


 クルリと振り返って、二人に向く。


「二人とも、どうもありがとう。本当に嬉しかった」



 そう言って、嬉しそうに細めた瞳で、花がフワッと咲き開くようなきれいな微笑みを見せた。



 それは、透き通るほどに透明で、とても素直な鮮やかな微笑みだった。



 朔也とピエールは、一瞬、言葉を忘れ、その微笑みに見惚れていた。


 瑠哀はそんな二人に近づいて、親愛をこめて優しく二人の頬にキスをする。


「本当に、ありがとう。これ、ユージン達に届けてくるわ」


 瑠哀が軽やかに駆けて行き、シーンと奇妙な静かさが部屋に残される。



「ピエール……、俺――もう、ダメだ」



 見ると、硬直したまま立ちすくんでいる朔也が、苦しそうにその言葉を吐き出した。

 手で口を覆い出し、はぁ、と長い溜め息をついて首を横に傾ける。



「俺……一瞬、ルイを抱き締めるところだった。

あんなに無防備に微笑まれたら、俺…止まらなくなってしまう。

やばいな、心臓がまだバクバク言ってる―――」


 ピエールは、あまりに素直な朔也に目を大きくする。