「その言葉の様子から言って、以前から、かなりやっているようだな」

「まあ、身を守るための一つとして、ね。

でも、滅多にはやらないわ。

特に、信用のできない男の前では絶対にやらないの。

昨日は例外。サクヤの素性に興味をかられて」

「俺の?」

「そう。でも、ちょっとやり過ぎたかな」

「そのようだね」


 同意したピエールを横目で見て、瑠哀はもう一度溜め息をついた。


「あの男と二度と食事をしてはいけないよ」

「する気もないわ」

「それを聞いて安心したな」

「ねえ、そのバラはどこにあるの?

投げ捨てた?」

「いいや。セシルの部屋に飾ってある」


 瑠哀は一瞬ピエールを見、くすくすと笑い出した。


「さすが、ピエールね。ありがとう」


「どういたしまして」

「ねえ、このケーキ、ユージンにも分けてあげましょう?

こんなに大きいから、みんなで分けても余っちゃうくらいね」


 瑠哀はそこに置かれていたナイフでケーキを人数分切り、三つを取って皿に乗せた。