ぽかん、という顔をした後
簡単にその顔を崩して笑う彼女。
「変なの」
何だろう、
少しずつ、
少しずつではあるけど
近づけている気がするんだ。
彼女に…。
と、思った矢先。
「あ、」
そんな声と共に簡単に変わった彼女の表情。
見えない壁が、
簡単に作られた気がした。
「すいません、ちょっと電話…」
こちらの返事より先に消えた彼女の姿にそっとため息をこぼす。
…そうなんだ、
結局、俺は何かを隔てた向こう側で。
その何か、は
彼女の中で絶対的で、
全く揺らがなくって…
「かいちょー」
千田の声に揺れた空気は
簡単に昨日の記憶を霞ませた気がした。