「隆史、あのね」
「可愛くなってるし、
表情もやわらかくなってる。
なのに、たまにみせる表情はさみしそうで。
俺と一緒に居ても、
誰かのこと考えてんだなってわかるんだ。」
「隆史、あのね、私…」
「いいよ
最後ぐらい、かっこつけさせてくれよ。
俺がお前を、加藤亜紀を振ったんだって。」
最後まで優しい彼は、そう言って笑った。
「…タカシ」
「ん」
涙もろい彼は。
目一杯に溜めた涙を隠すようにそっけなく背中を向けた。
隆史のこと。
誰よりも知っているつもりだった。
だけど、もう違うんだね。
隆史はもう、私なんかよりずっと大人で。
ねぇ。
追いつけないぐらいだよ。
「今まで、ありがとう!」
改札をくぐった彼に
目一杯の思いを込めてそういった。
どれほどこの言葉を伝えたら
足りるんだろう。
ありがとうを、どれだけいえば。