こういうとき、泣くのはずるいし、違うと思う。

だから絶対泣かない。





「俺さ。ズルいんだよ。」

「え?」


「おばさんが死んだとき、
あ、チャンスだって思ったんだ。

最低だろ?」


自嘲気味に笑った隆史はこれまで見たどんな表情よりも大人っぽくて。



「これで亜紀に近づけるって。

昔からお前、強いから。
こんな時でもないと支えられないと思ったし、
貸を作れないと思ったから。

そうでもしないと、
亜紀は俺のこと好きにならない。」



痛む胸は、きっと。
自分への怒り。


彼を、傷つけていたんだ、ずっと。



「でもさ。
結局、俺は亜紀のこと支えることも助けることも出来なかった。」


そんなこと、ないんだよ。
隆史が居なかったら私きっと…


「それがさ。
この町に来てから、亜紀どんどん元気になるし。

電話口でわかるんだよ。
どんな表情してる、とか。
今どんな顔、とか。

最初は、おばあさんと一緒に居るからかな、とか思ったけどさ。

違うんだよな。




好きな人、なんだよな、きっと。」