「ははは、まさか。」
昔からこうだった。
ずっと欲しいと思っていたおもちゃ。
クリスマスにやっと買ってもらえばそれは何か製品として問題があるものでメーカーから回収され。
ずっと食べたかったお菓子には、俺がアレルギー反応をもつ食材が入っていて、その味を楽しむことなく発作で死にそうになった。
初めて付き合った彼女だって、好きになったと思ったら振られたし。
会いたい、会いたいと思っていた人なのに。
会ってみれば何も言えなかった。
「ほんとに鈍感だよな、お前。」
「え?」
もともと、
何か言いたくて会いたかったわけじゃない。
強いて言えば、
名前が知りたかった。
もっと声が聞きたかった。
話を聞いてみたかった。
まぁ、たったそれだけで。
たった…それだけ、なんだけど。